映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は観て数日経っても、頭の中をぐるぐる巡る映画でした。
先日、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観に行きました。
岩井俊二は復興支援ソング「花は咲く」の作詞を手がけ、この唄を耳にされた方も多いと思います。
私は岩井俊二を学生の頃に知り、映画『花とアリス』が大好きで、何回も見ました。
音楽も好きでサントラも持っています。
ちなみに、とある撮影場所が自宅の近くで、知った時は喜びでいっぱいでした。
終盤、蒼井優がバレエを踊るシーンは何度観ても感嘆!!
最近では、『花とアリス』の前日談がアニメで製作されました。こちらはまだ観ていません。
有名な作品はこちらでしょうか。
なかなか重い作品です。
他に、脚本・プロデュースした『虹の女神 Rainbow Song』もとても好きです。
さて、本題の映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は最近では珍しい、上映時間が驚きの3時間!!
しかし、私は3時間という長さがあるからこそ、この映画は良いと感じました。
まだまだ消化しきれていない部分がありますが、そうやって「あれは何でだったんだろう」と映画について考える時間も、私は好きです。
以下、感想を書きますがネタバレがありますので、ご注意下さい。
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(感想)
黒木華演じる七海と自分が重なる。
七海は自分の気持ちを言わず、その場を笑って取り繕う、そんな人物です。
何か聞かれても笑ってごまかし、ひどいことをされても、波風を立たせなきゃいい。
そんな姿が前半は特に描かれています。
しかしながら、ツイッター(映画ではプラネットというアプリです)では、正直な自分の気持ちを吐露しています。
自分のちゃんと感じている気持ちはあるけれど、面と向かって人には言いづらく、
むしろ笑ってその場が収まるのなら、なにも考えず流されてしまう。
そうやってずっと生きてきて、仕事もうまくいかず、結婚に逃げようとします。
私は昔よりは、自分のことを伝えるようにはなったけれど、自己主張が苦手なところとか、笑って取り繕うところなど、不器用な姿が自分を見ているようで、胸が少し痛みました。
そんな七海が映画の中で変化していきます。
序盤は声が小さくて、生徒に馬鹿にされていたけれど、
最後に、引っ越し祝いにきてくれた安室を見送る時の声は、とてもしっかりして大きかったです。
●こんな結婚式もあるんだと、驚く。
まず、結婚式で代理出席というアルバイトがあることに驚きました。(知らなかった…)もはやそうなると、結婚式は茶番になっちゃいます。
見栄の張り合いというか、お飾りで、何のためにするんだろうと分からなくなりました。
あと、驚いた演出がありました。(説明がうまく出来ず、すいません)
「今まで育ててくれてありがとう」と、両親に挨拶するシーンで、幼い頃の新郎新婦を演じる子供がでてきて、思い出を語っていくのです。
新郎ジュニア(中学生っぽい野球のユニフォームを着た男の子が)「中学時代は野球に明け暮れました」
新婦ジュニア(女子高校生が)「お母さん毎日お弁当つくってくれてありがとう」
そして最後に、本物の新郎新婦にバトンタッチ!
新郎・新婦「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう」
といった、演出が劇中に出てきて唖然としました。
こんな演出もあるんですね。
また、七海は一度結婚した際に自分が新婦側でしたが、離婚し、今度は代理出席のバイトで、結婚式に参加するという、面白い流れがありました。
しかし、驚くほど七海は感情の変化もなく描かれていて、そこが興味深かったです。
普通なら、どんなに酷い別れ方でも、一瞬でも新婦に自分も姿を重ねそうな気がしますが、それがなかったです。
●心も裸にする
クライマックス、七見と安室が真白の母親に会いにいき、母親が突然裸になる場面があります。
あのシーンは本当に感動しました。
AV女優として生きてきて、そんな娘を恥だと疎んでいた母親が、初めて娘の気持ちに寄り添ったシーン。圧巻でした。
ただ、あそこでなぜ安室も裸になったのかが私には謎でした。
数日経って思うことは、安室自身、複数の仕事を持っていてその都度仮面をかぶって仕事をこなしています。
そんな彼が、心の鎧を外した母親の姿をみて、自分も心を裸にしたかったのかなと思いました。
●やはり映像と音楽が素晴らしい
岩井俊二と言えばなんといっても、光の使い方が圧倒的に美しい。
真白と七海が自転車に乗って草原を駆けるシーンや、ウェディングドレスを着て踊るシーンとか、水槽の青い光など、もう一度見たい。
使われているクラシック音楽もとても心地良かったです。
最後になりますが、とにかく黒木華とCoccoのメイド姿とウェディングドレス姿はとにかく可愛かった!!女性として憧れます!
あと、黒木華の歌声も綺麗でした。
またCoccoの音楽を昔よく聞いていたのですが、女優としての彼女の存在は圧倒的でした。
まだ、映像や音楽が頭の中を駆け巡っています。
DVDになってからまた見返したい、そんな映画でした。
素敵な時間をありがとう!
日向野あおい